映画「武士の家計簿」
楽しみにしていた映画を見てきた。
「金沢藩士猪山家文書」を読み解いた磯田道史氏の著書「武士の家計簿<加賀藩御算用者>の幕末維新」(新潮新書刊)が原作の映画だ。
そろばんバカと言われるほど仕事に熱心で生真面目な御算用場に勤める下級武士、猪山直之。記帳された資料から米の横流しを見つけ上司に告げるも慣例だからとその件をもみ消されてしまう。下っ端はどうすることもできない。
一方、妻から猪山家の家計が借金に見舞われていることを告げられ、算用の腕を生かし一念発起、「猪山家家計立て直し計画」を宣言。見栄や世間体を捨てて家財を徹底的に売り払い家族全員で質素倹約に努めた。
この映画はそんな倹約だけを強調しているのではなく、家族の絆をも描いていた。
以前見た藤沢周平の「山桜」や「たそがれ清兵衛」、「隠し剣鬼の爪」等でも感じたようにこの時代は現代から比べるとなんと無駄の少ない生活何だろう。また着物を着ての立ち居振る舞いや親に対する尊敬の念と言葉づかい。どれをとってもこのころの日本人の生活ってあらためていいな~と感じる。今の日本人は自分も含めすっかりそんな精神を忘れてしまっている。とても残念なことに思う。
豪華だった職場に持っていく手弁当が倹約により握り飯一つ、ふかし芋、お新香になり同僚や下の者にも同情されるほど。それでもそんな世間体を気にせず堂々としている姿にあっぱれである。
そんな倹約に倹約を続け、いつしか膨大な借金もなくなる。そして代々の「御算用者」は自分の子供に小さい頃から家計簿を付けさせ算用術を身につけさせていった。
派手さは全くない映画。でも、古き良き日本人の慎ましさを改めて認識させられ反省させられる。また、自分の仕事に誇りを持ち人になんと思われようと迷うことなく一筋に力を注ぐ、生きていく姿はじわじわと見ている者に伝わってくる秀作な映画だと感じた。
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