この映画のCMを見てこれを見たいとすぐ思った。
「伊能忠敬は大日本沿海輿地全図を完成させていない」っていう台詞が耳に入ってきて引っ掛かりを感じたのだ。千葉県人として伊能忠敬を誇りに思って居るのに地図を完成させていないとは?教科書でならったはずなのに、じゃ、誰が完成させたと言うのか?!
どう言うことなのか納得するためにもとこの映画を何も調べないまま見に行った。そして映画が終わってエンディングロールが流れたときにこの映画の原作が「がってん」でお馴染みの落語家、立川志の輔さんだと知ったのだ。かつて佐原を訪れた際、伊能忠敬記念館を訪れその偉業を称えるべく新たな視点による物語を仕立て新作落語として世に送り出したら絶賛を浴び続けていたそうな。それを知った中井貴一が志の輔に掛け合い映画と言う形でその偉業を知らしめたいとなったという。

以下はネタバレしますので 映画を見てみたい方は読まないでくださるようお願いいたしますm(_ _)m
映画は先ず顔の上に白布をかけられた人が横たわり、その回りに数人の人が悲しむ姿から始まる。その人物こそかの<伊能忠敬>だ。日本地図を完成させる前に病に倒れ亡くなってしまい弟子達が悲しみにくれていた………
そしていきなり?!現代劇へと変わる。佐原市役所内の会議室。観光振興策の検討会議で意見を求められなんとか捻り出した意見で郷土の偉人・伊能忠敬を主人公にする<大河ドラマへの実現>を提案する池本(中井貴一)。なんとそれが採用されそのプロジェクトリーダーにされてしまった❗️
早速、伊能忠敬の大河ドラマにするための脚本家を訪ねる。知事(草刈正雄)直々に推薦された、既に引退していて渋る脚本家の加藤(橋爪功)を諦めず部下の木下(松山ケンイチ:ちょっと間の抜けた役でおかしかった)を引き連れ、何度も通い伊能忠敬の素晴らしさを理解して貰い説得させることが出来たが……。
脚本家の加藤がプロット(筋・構想・あらすじ)を提出する日、衝撃的な言葉を発するのだ。「伊能忠敬は地図を完成させてない。だから、ドラマにはならない。」「地図が完成する3年間、忠敬の死は伏せられていたんだ。」呆然とする池本らプロジェクトの皆に日本地図完成までの道のりを語り始めるのだ。
そして、また江戸の舞台にに変わる。ここで面白いのは関わる人たちがプロジェクトチームの面々や現代劇に出てきた人に演じさせている一人二役の配役で痛快だった。
予算が掛かる地図作りは幕府から「金食い虫」と見なされていて、もし、忠敬の死が知られれば作成が打ち切られる恐れがあるからだ。弟子たち測量隊はなんとしても地図を完成させたいと天文方(天文・歴術・測量を司る役職)高橋景保<中井貴一>に懸命に願い出るも忠敬の死を幕府に伏せて万が一幕府にばれれば<打ち首>になる恐れがあると拒否。しかし、忠敬のかつての妻<北川景子>が仕掛けた策にだまされ、また、弟子たちの地図作りへの熱意にも心打たれ協力する事になる。その偽装工作に全力で取り組む日々が始まった。
ちょっと怪しいと感じ始めた幕府のものたちが抜け駆けでやってきたり、スパイを送ってきたりと景保や弟子たちをハラハラさせるがなんとか免れ、やりすごせた。そのいくつかの策略がとてもおもしろかった。
それにしても、当時コンピューターやドローンも全く無い時代に正確無比な地図を作成したって事に今更ながら驚嘆する。
その工程もいくつもあって本当に気の遠くなるような作業である。伊能忠敬を失って三年後、やっと地図を完成させ江戸城に運ぶ事となった。
景保は打ち首も覚悟で登城。測量隊に被害が及ぶのを避け、彼らを連れて行くのは拒否するも師のために命も惜しくないと彼らは共に城を目指す。
圧巻なのは将軍・家斉に地図を見せた時だ。(西日本図だったそうだ。東日本図は以前、家斉に上覧しているそう。全日本図とすると畳214枚分もあるため大広間には広げられなかった。25mプール2つ分になる大きさだったそうだ。)壮観だった。家斉は「日の本はこんなに美しい形をしているのか!」と褒めて感動、「ところで忠敬はどこにいる?」と問われると、景勝は懐から忠敬愛用だった古わらじを出す。朱色で<忠>の字が書かれていた。それで家斉は忠敬の死を理解したようだ。特にとがめるシーンは無かった。さらに隣の座敷では測量隊が皆泣いていた。
そして現代に戻る。知事室で知事に報告をする池本と観光課の小林(北川景子)。ドラマにはならないと断られたことを報告。「もう少し時間をいただければ・・・そのためにも知事に再選していただきたい」と。
後日、池本は脚本家の加藤を訪れる。「これで<高橋景保>の大河ドラマが書けるのではないですか?!」加藤が言う。「景保は大阪出身だ!」
それを受け池本は「それでは私が<伊能忠敬の大河ドラマの脚本>を書きますから、どうか弟子にしてください!!!」(大笑)
さすが立川志の輔、落語家の原作である。笑いどころ満載面白い映画だった。
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